皮膚の光老化に対する予防および改善効果を有する天然由来成分や、機能性成分の研究が盛んに行われています。
本研究では、線維芽細胞の光老化モデルにおけるナイアシンアミドとアルテロモナス発酵エキスの併用効果について検証を行ったところ、シワやたるみの原因となるコラーゲン分解酵素MMP-1(マトリックスメタロプロテアーゼ-1)の発現を相加的に抑制することが明らかになりました。MMP-1は紫外線などによる炎症により真皮や基底膜の構造タンパク質を壊すことで様々な老化症状を引き起こすことが知られています。
この発見は肌老化の約80%を占めるといわれている光老化に対し、新たなアプローチとなる可能性があると考えられます。
肌老化の原因となる“光老化を防ぐ効果”に着目
近年、肌の老化現象は細胞だけでなく、その周辺環境も影響を与えることが分かってきました。これらの相互作用を考慮した研究は、空間生物学やマトリックス生物学などと呼ばれ、最新の老化研究として注目されています。今回の研究では、シワやたるみと密接な関係がある真皮の細胞外マトリックス(ECM)成分、特にコラーゲンやエラスチンといったタンパク質を産生する線維芽細胞の光老化に焦点を当て検証対象として、以下の2つの成分を組み合わせました。
ナイアシンアミド |
シミ、シワに対する医薬部外品の主剤として近年注目されており、コラーゲンの合成促進効果など幅広い作用がある。 |
アルテロモナス発酵エキス |
深海の過酷な環境を生き抜く微生物が作り出す成分で、肌免疫やくすみにも効果が期待されている。 |
これらの成分を組み合わせることにより、線維芽細胞の光老化に対してどのような効果があるかを検証しました。
光老化モデルにおいてコラーゲン分解酵素を相加的に抑制する効果を発見
ヒト線維芽細胞に光老化の原因となる紫外線を照射すると、コラーゲン分解酵素(MMP-1)の発現が増加しました。医薬部外品の主剤としても知られるナイアシンアミドを添加した細胞ではこの発現が抑制されました。
図:光老化モデルにおけるMMP-1の発現
真皮線維芽細胞にUVBを照射後、各試料を添加。24時間後、再度UVを照射し各試料を添加。一定時間後にMMP-1発現の指標となるmRNAの発現量を評価した。
※エラーバーは、平均値+標準偏差
本研究より、さらに注目すべきポイントとして、ナイアシンアミドとアルテロモナス発酵エキスを併用した群においては、ナイアシンアミドのみを添加した群よりも高いMMP-1の発現抑制効果が認められました。この結果は、この両成分の組み合わせが、ナイアシンアミド単独使用よりも光老化に対して効果的にアプローチできることを示唆しています。