マイストーリー

15周年を機にリニューアルした会報誌「AMPLEUR magazine」の表紙を手がける利光春華さん。イラストレーターとして第一線で活躍する彼女が歩んできたマイストーリーとは。

憧れだったイラストレーター 15年前というと、まだ美術学校に通う学生でしたね。昔から絵を描くことが好きだったので将来はイラストレーターになりたいと思っていたのですが、みんなが広告やデザイン系の会社に就職する中、絵を描けるところはどこだろうと考えて、一人アパレル会社のデザイン部に就職しました。入社直後からTシャツのイラストなどを描かせてもらい、最初はただ自由に描いていいと言われていたので、好きなものばかりを描いていました。すると上司から「好きなものもいいけど、売れるものをつくらないと」と諭され、そこから男の子にはこんなモチーフが人気があるとか、女の子は今こんな感じを求めているとか、自分なりに研究を始めて、だんだんと売れるものをつくれるようになっていきましたね。

実は入社と同時に個人名義での活動も始めていて、ファッション性の高い人物のイラストを中心にたくさんの作品を描いていました。ただ、アパレルのようにブランドのトーンや注文があるものと違って、すべてが自由な個人での制作は、自己完結しているように思えて、だんだんどこに軸足を置けばいいのかがわからなくなってきてしまったんです。オーダーがあって絵を描いていくスタイルと、全く自由に描いていくスタイル。その両方を経験してみて、自分にはコミュニケーションを取りながら求められている絵を描いていく方があっているなと感じたんですね。それに気づけたことで気持ちが少し楽になりました。

25歳での独立 入社して4年。Tシャツの仕事も売れ筋みたいなものがつくれるようになっていた時期だったのですが、思いきって会社を辞めました。好きな仕事でしたし、会社も居心地がよかったのですが、初めから「25歳までに独立しないと絶対にイラストレーターになんてなれない」と心に決めていたので、ツテも何もない状態でしたが独立して、そこからは文字通り手探りの毎日が始まりました。
最初の頃は雑誌社に売り込みなどにも行っていたのですが、忙しい方の時間を割いてまで仕事に繋がるかもわからない自分の絵を見てもらうことがとても申し訳なく思えてしまって、この方法は向いていないなと思ってやめたんです。

そこからイラストレーターや、カメラマン、ヘアメイクの方がいるエージェントに所属して、少しずつですがお仕事をいただくようになっていきました。いろいろなクリエイターの方と組んで作品をつくっていく中で、写真の上に絵を描くみたいな技法も生まれたり、この時期にいろいろな刺激をもらいましたね。

ターニングポイントとなった出会い そんなある日、アーティストのYOSHIKAさんのCDジャケットのイラストを描くお仕事をいただいたんです。それは、まだまだ経験の浅かった私にとって大きなターニングポイントでした。当時はCDジャケットのイラストなんて描きたいけど描けるはずがないと思っていたので、ただただ信じられなくて。しかもイラストだけでなくデザインまで含めて任せていただけたんです。早く取り組みたいのにドキドキして手をつけられないという日が続きました。しかし、無事に気に入っていただけるものを仕上げることができ、これを機にYOSHIKAさんと「ARMATEL(アマテル)」というグループを組んで、音楽活動のビジュアル・アートディレクションを担当する形で現在も一緒に活動を続けているんです。私にとってとても大きな出会いとなりました。

いちばん大切にしていること これまでいろいろなお仕事をさせていただきましたが、イラストを描くとき、いつも心がけていることがひとつあるんです。それは、いい意味で期待を裏切るイラストレーターであること。お仕事を依頼される場合、過去の作品を見て「こんな感じでお願いします」と言われるケースが多いのですが、そこに少しばかりの新鮮味を加えることを大切にしています。しっかりとオーダーに応えながらも、相手を驚かすようなアイデアを盛り込むことで、今までよりもちょっと新しい素敵な世界を描けるんじゃないかと思うんです。そんな風に思いながら、一つひとつの仕事に向き合っています。

2017年には初となるビジュアルストーリーブック『Ribbon』を出版することができました。鳥の目線で、横にではなく奥に進んでいくような表現にトライしたいと考えていたとき、ちょうど絵本制作のお話をいただいて。いろいろな方に協力していただきながら、試行錯誤の末に、温めていたアイデアを形にすることができました。この『Ribbon』も、もともとは頭の中に浮かんだ小さなアイデアがきっかけでした。毎日絵を描きながら次はこんなことができたら面白いなと想像をめぐらしています。大好きなイラストの仕事と向き合いながら、そんな風に新しい自分の可能性に出会えることが私自身とっても楽しみなんです。

取材・文:鈴木こうき

利光春華さんが出版されたビジュアルストーリーブック「Ribbon」を、抽選で15名様にプレゼント。

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イラストレーター

利光春華 さん

美術学校を卒業後、アパレル会社に勤務。同時期からイラストレーターの活動を開始し、2008年に独立。現在、イラストを中心に幅広く活躍中。